今回は、中嶋彰先生のこちらの本をレビューしていきます!!
ブルーバックス:早すぎた男 南部陽一郎物語 時代は彼に追いついたか
科学者になることを目指して、日々大学院で修行しているゆかです!専門は有機化学!
大学院生になってブルーバックスに爆ハマりした人!
【本を読む前のゆかの知識レベル】
高校の時の履修科目 | 物理・化学 |
大学入試で用いた科目 | 物理・化学 |
大学の教養課程でとった科目 | 力学・電磁気学 量子化学 |
上記の通り、理系大学生がよく履修する科目は習っていますが、物理は本当に苦手です。大学の力学はギリギリ特単のラインでした(汗)
こんな感じのレベルの人が、こちらの本を読んだ感想を書いていきます
概要
2008年に『自発的対称性の破れ』でノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎先生。
本書は2021年に南部先生の生誕100周年を記念して、中嶋彰先生が手がけた南部先生のライフストーリー(伝記)である。
タイトルに「早すぎた男」とあるが、それは南部先生が天才すぎるが故、理論の発表当初は誰にも理解されなかったからのようだ。その逸話として同僚から次のようなコメントが残されている。「南部の研究は常に我々より10年先んじている。そこで、ある時南部を理解すれば他の人より10年先んじられる、と思いついた。しかし南部をやっと理解したと思ったらもう10年の時がたっていた」
そんな南部先生は『自発的対称性の破れ』、『量子色力学の提唱』、『ひも理論の提唱』という素粒子物理学を塗り替える理論を次々と生み出した。しかし、南部先生の研究者人生は一筋縄ではいかなかったようだ。最も印象的な出来事は、南部先生のうっかりな性格により、『自発的対称性の破れ』の成果が他の研究者に危うく取られそうになったことだろう。他にもそのうっかりな性格がさまざまなことを引き起こしたそうだ。
南部先生の残した業績とともに、それが世に出るまでの彼の人間臭い一面を実感することができます。
感想
科学者を目指しているものとして、この本を読めて良かったなと思った一冊でした。
本書を読むまで「2008年のノーベル賞受賞者」という表面的な部分しか知らなかったのだが、彼の圧倒的すごさに触れて、「こんなすごい科学者の伝記を見れて、見過ごさないで本当に良かった」と思った。彼が天才的な思考で素粒子物理学の世界を作っていく様子は、シンプルにかっこいいなと思った。そして、関わってきた先生が、湯川秀樹、朝永振一郎、アインシュタイン、オッペンハイマー、小柴昌俊、益川俊英、小林誠、などでもう豪華すぎる!!また、一筋縄では行かないこともあったようで、その場面も少し見ることができました。
最後にはタイトルにある「早すぎた男」という意味も理解することができました。なぜ彼の受賞が2008年になったのか(遅すぎるという意味で)、ノーベル賞委員会がソワソワしている様子(笑)も伺えて、2008年の選定にはこういう背景があったのかと楽しく拝見することができた。
あと、一つすごいなって思ったことをここに書き記しておきます。この本を読むきっかけとなったのは、「大栗先生の超弦理論入門」という本を読んだからなんです。
大栗先生が書いた本の中では、超弦理論理論の鍵となる人物として南部先生が取り上げられていました。
そこで南部先生の伝記である本書を読んだのだが、本書には、現在のトップの超弦理論として「大栗先生」が紹介されていました。
そこが交差してて、すごって思ったんですよ。「こっちの本には大栗先生出てきとるやん」ってね笑
南部先生がこの理論を提唱して、その後大栗先生達が発展させてってという現代物理学の歴史が感じれて、ちょっと興奮してました。
正直、南部先生が凄すぎるが上、ため息が出てしまった。
ただ、科学者を目指しているものとして「こんなにすごい科学者が日本より誕生していたのか」と気づくことができ、本当に良かったなと思う。
まだまだ実力不足ではあるが「科学ってすごいなー」と思って今の自分に至るので、これからも研究頑張りたいなって思いました!
おすすめしたい人・難易度
- 素粒子物理学に興味がある人(この人には絶対読んでほしい!素粒子物理学の基礎を築いた南部先生のライフストーリーは胸が高まります!!さらに素粒子物理学に興味を持つようになる気がする!!私も自分の専門分野違うけど、最近素粒子に興味が出てきた!)
- 激アツな研究者人生のストーリーを見て、元気を貰いたい人。(生涯研究に捧げた南部先生の生き様をみて、私も頑張ろうとエネルギーをもらいました!!)
難易度 (4段階評価)
入門・高校レベルの知識必要・大学レベルの知識必要・めっちゃ難しい
本書は、南部先生の研究者人生を業績とともに振り返っていく構成となっている。正直、業績の部分の理解は少し難しい(おそらく高校・大学レベルの知識が必要であると感じた。一部私も理解しきれなかった)。ただ、南部先生の研究者人生をぜひ実感してほしい!!
おまけの感想
私の中でかなり衝撃を受けたエピソードは以下である。
「南部が一高に入学した1937年は日中戦争が始まった年だった。」
一高というのは、現在の東大等の前身である。つまり今でいう大学生だ。冷静に南部先生の生きている時代を考えれば一高時代に戦争を経験しているのはわかる。しかし、個人的にはそれは衝撃だった。
今は私は大学院にて研究をしているのだが、戦争などを考えることもなく研究に没頭できる環境にいる。しかし、南部先生が生きていた時代は、そのような状況ではなく戦争が隣り合わせにある時代だった。
それを実感した時に、現在研究に没頭できる環境って恵まれているのだなと感じる一方、そのような状況でも勉強に励みノーベル賞級の研究を世に残した南部先生はすごいなと思った。
そして、そんな恵まれた環境にいるのだから、研究頑張らないとなと思いました(ってことで、明日からまた研究がんばります!!)
補足
この本を読み終わった後に、次私が読みたいと思ったのはこの本。南部先生が直接「クオーク」について書いたものです。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194166
その理論を築いてきた南部先生が書いているなんて、なんて贅沢な本だなと思いました。読むのが楽しみです。
(そして、わかりやすいのかが気になります笑南部先生は天才すぎるが故、説明がわかりにくいと本書でよく紹介されていたので笑)