体の中の異物「毒」の科学 普通の食べものに含まれる危ない物質 | 小城勝相 | ブルーバックス | 特別展「毒」を見学する際におすすめの本!

今回は、小城勝相先生のこちらの本をレビューしていきます!!

ブルーバックス:体の中の異物「毒」の科学 普通の食べ物に含まれる危ない物質

この記事を書いた人
ゆか

科学者になることを目指して、日々大学院で修行しているゆかです!専門は有機化学

大学院生になってブルーバックスに爆ハマりした人!

【本を読む前のゆかの知識レベル】

上記した通り、現在は有機化学を中心に研究を行なっています。

「毒」も有機化合物でできているのは知っていますが、「毒」の世界はあんまり勉強したことない。

こんな感じのレベルの人が、こちらの本を読んだ感想を書いていきます

目次

『「毒」の科学』の概要

「毒」って聞くと多くの人が、「スズメバチ」や「毒キノコ」などを思い浮かべるとおもいます。

でもでも、実はそれだけではないんです。私たちが生きていくために必須な「食べ物」も時として「毒」になることも…

ただ、私たちは毎日安心して身の回りに売っている食べ物を食べることができていますね。それは「中毒学」という食物が潜在的に持つリスクを研究している研究者たちのおかげです!

そんな「中毒学」について一緒に考えていきませんか??食べ物は私たちになくてはならない存在なので、自分の身を守ることにも繋がりますよ!!

  • ポテトチップスは体に悪いのか!?
  • マーガリンって体に良くないってほんと…?
  • 受動喫煙の危険性とは…?

ということについても深掘りしていきます!

感想

「有機化学」を普段研究しているものとして、めちゃめちゃ面白かったです!!

今まであまり意識していなかったのですが、私たちの体は膨大な数の化学反応によって維持されています!

そして「毒物」というのは、その膨大な数の化学反応にスッと入り込み、生命に必要な化学反応を阻害することで、私たちの体にダメージを与えます。

そんな「毒物」が、私たちの体に取り込まれた後、どのように全身に分布して、どのように私たちに不可欠な化学反応を侵略するのか…

「毒物」っていう世界は今まで全然勉強してこなかったのですが、めちゃめちゃ「有機化学」やんけ!おもしろっ!!と終始興奮していました。(それに「食べ物」という身近なトピックですしね!)

具体的には、アルコールかび野菜や漬物に含まれるミネラルなどについて考えていきます!!(冒頭で紹介したポテトチップスやマーガリンの話もね!!)

さらにさらに、「毒」を毒と評価する医学的な考え方や、毒を封じるための社会制度も見ていきますよ!!


ここで個人的に興味深かった話のご紹介

「食べ物」ではないのですが私たちの体に影響を与える(毒物)ということで「ベンゼン」の紹介もありました。「ベンゼン」が有機溶媒として使用されなくなって、代わりに構造がよく似ている「トルエン」が用いられているというお話です。(私もよくトルエンを研究で使っています!)

ちょっとマニアックになるので補足しますね笑

「ベンゼン」をご存知でしょうか?高校化学で出てくるやつですね。亀の甲って言われているやつです。(下記図参照)。有機化学ではめちゃめちゃ大事な基本的な骨格です。

このベンゼンですが、以前は有機化学の実験でめちゃめちゃ使われていました(溶媒としてです)

ただ、この「ベンゼン」について発がん性があることがわかったので、今では似た構造を持つ「トルエン」などが用いられています

こんなに構造が似ているのに、一方が発がん性を持ってもう一方は発がん性を持たないってすっごく不思議で面白いですよね!!

発がん性によりベンゼンが使用されなくなったのは知っていたのですが、どのようなメカニズムでベンゼンが発がん性を持つのかお恥ずかしながら知りませんでした。そして構造が非常に似ているトルエンでは発がん性を持たない理由も汗

本書を読んではじめて化学的に理解できて、こんな少しの違いで性質がガラリと変わるなんて、やっぱり有機化学って面白いなって思いました!


こんなふうに身の回りに潜む「毒」について考えていくのは楽しいですね!(それに自分の身を守るためにも大事です!!)

ぜひ、みなさん本書を読んで考えてみませんか?

おすすめしたい人・難易度

おすすめしたい人

私たちが生きていくために必須な「食べ物」についての本なので、いろんな人に読んでほしい!!

あと本当におすすめしたいのは、私みたいに高校・大学で有機化学を学んだよっていう人!

本書は「有機化学」という視点でも本当に興味深い!!しかも、それが私たちの身の回りの食品についてですよ!「有機化学」という学問がいかに私生活に密接しているか、豊かにしているか感じることができると思います!(そしてさらに有機化学が楽しく・好きになる!!)

難易度 (4段階評価)

入門高校レベルの知識必要…?・大学レベルの知識必要・めっちゃ難しい

身近な問題である「中毒学」をいろんな人に理解して欲しい!という筆者の思いから高校化学の知識を持っていない人でもわかるように書かれているようです!(はじめにで記載してくれました!さらに、2章で必要な化学知識についての解説もあります!!)

ただ、中盤からかなり化学に踏み込んで解説してくれるので、高校化学を知っているとかなり読みやすくなるかもです!!

おまけの感想

実は東京で大人気だった特別展「毒」に行きたくて、予習するために読みました!!

私は名古屋市科学館で開催されていた時に伺いましたよー!!(会期:2024年7月13日〜9月23日)

それで、はじめて名古屋市科学館にお伺いしたんですけど、常設展も最高すぎて…

大学院生、1人ではしゃいでいました笑 あまりに楽しすぎてブログ書いたので、よかったら見てねー!

あとあと、大ファンのブルーバックスさんで記事を書かせてもらったのでよかったら覗いてみてください!!!

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